深入りしてはいけない錐体外路の勉強
下行性伝導路として「錐体路」の理解は問題ないでしょうか?
筋力トレーニングを指導していくPTとして、絶対に覚えなくてはいけないところです。
ちなみに、覚え方は興奮が伝わる場所をイメージして「運内大橋錐体で交叉し側索へ!」です。
そして、錐体路以外の下行性伝導路は、すべて錐体外路となります。経路は複雑なため、国家試験には、伝導路名を覚えることだけで十分です。深入りして細かな経路を覚える勉強は必要はありませんし、時間の無駄になってしまいます。
ちなみに、大まかな理解としては、以下の内容で問題ないと思います。
〜押さえておきたい国試に出る下行性伝導路〜
「錐体路」は、随意運動の伝導路で、意識を伴う運動の伝導路。
「錐体外路」は、随意運動を微調節する伝導路で、無意識の運動に関与する伝導路。
だから、錐体路外路系のどこかに障害が生じると、錐体路系が大きく障害されていなければ体を動かすことはできますが、勝手にふるえてきたり、動きがぎこちなくなったりしてしまいます。
例えば、パーキンソン病は、安静時振戦が特徴の変性疾患です。難病指定の疾患です。これは、錐体外路を構成する黒質で作られる神経伝達物質「ドパミン」が何らかの障害によって減少し、体の調節がうまくいかなくなるといった、錐体外路症状を示します。
ちなみに、パーキンソン病の4大症状を覚えていますか?
〜スラスラ言えますか?パーキンソン病の4大症状〜
- 安静時振戦:じっとしている時に手、足、口などが震えてくる。
- 筋固縮:筋が過緊張状態で、スムーズに動かすことができない(歯車様、鉛管様)。
- 無動・寡動:動作の開始に時間がかかる、ゆっくりになる(すくみ足、仮面様顔貌)。
- 姿勢反射障害:バランスをうまくとれない(突進現象)。
この4つは、臨床的にも国試的にも重要です。病態を整理しておいて下さい。
中枢神経系は図を書いてアウトプットしよう!
画像診断技術の向上により、脳梗塞の患者さんの麻痺の状態が推測できるようになりました。そのため、昨今の国試では画像を伴う問題が必須項目になっています。したがって、中枢神経(大脳・間脳・中脳・小脳・橋・延髄)の水平断の解剖は必ず覚えて下さい。特に大脳については、前額・水平・矢状断もです。
解剖を勉強する時は、必ず、自分で書いて下さい。勉強は、インプットとアウトプットをバランスです。見て覚える「インプット(入力)」と実際に書いてみる「アウトプット(出力)」は、全く別の脳を使っています。覚えた気でいても、いざ書こうとすると書けません。たとえ下手くそでも、実際に自分で書いて、場所をすべて言えたらOKです!
ここ数年の国家試験は、大脳・中脳の解剖は頻出ですが、伝導路を理解するためにも、全ての中枢神経の解剖はチェックしておいて下さい。
ちなみに、脊髄の水平断の解剖を勉強する時、側索は内側や外側の部位によって支配する場所が異なります。外側皮質脊髄路の場合、側索の一番外側が仙髄の領域、以下、内側に向かって腰髄、胸髄となり、最も内側に頸髄の領域があります。
だから、よく国家試験に「中心性脊髄損傷」の問題で、
Q .「下肢よりも上肢の運動障害が著しい」○か×か?
答えは、○です。
みたいな問題が設問の中にあります。
答えは、○ですよね。側索の最も中心に近い内側は、頸髄の領域だからです。
頸髄は腕神経叢があり、上肢の支配でしたね。
確認ですが、脊髄には膨大部が2つありますね。
頸膨大と腰膨大です。頸膨大は腕神経叢があるのでふくらんでおり、主に上肢を支配しています。また、腰膨大は腰神経叢があるのでふくらんでおり、主に下肢を支配しています。
このように、まず、「幹」となる人体の基本メカニズムを理解し、さらに、そこへ「枝葉」を自分で付け加えていくような勉強をして下さい。このブログでは、最も重要となる「幹」の部分を整理していきます。そこに「枝葉」を付け加えて、「立派な木」にしていくのは皆さんです!
神経系の仕組みを大まかに理解した上で細かなところを覚える〜森を見て、木をみる勉強法〜
神経系の基本は、以下の通りです。
〜神経系の全体像を掴む!神経系の反応経路〜
刺激→受容器→末梢神経(感覚神経)→中枢神経→末梢神経(運動神経)→効果器→反応
この大まかな流れれを、まずイメージできるようになって下さい。
PT国試では、この流れの中の「伝導路の名前」が設問にそのまま出ますので、「それが何の伝導路なのか?」を理解しておいて下さい。
その内、PT国試に出るのは、刺激を受容し、末梢神経(感覚神経)を介して中枢神経に伝える「求心性伝導路」です。「上行性伝導路」とも言います。上行性なので、伝導路の名前は、下(足側)からの上(頭側)への中継地点の名前が入っています。主な伝導路は、以下の通りです。
〜覚えておきたい!上行性伝導路:体性感覚〜
- 外側脊髄視床路:温痛覚
- 前脊髄視床路:粗大触圧覚
- (脊髄)後索路:微細触圧覚と識別性深部感覚(位置覚や振動覚)
- (前・後)脊髄小脳路:非識別性深部感覚(姿勢調節)
※体性感覚については、別の記事で詳細を確認します。
また、中枢神経からの命令を、末梢神経(運動神経)を介して効果器に伝えて反応を起こす「遠心性伝導路」もPT国試に出ます。「下行性伝導路」とも言います。下行性なので、伝導路の名前は、上(頭側)からの下(足側)への中継地点の名前が入っています。
〜覚えておきたい!下行性伝導路=錐体路:筋収縮に意識的に働く〜
- 外側皮質脊髄路:首から下の筋を意識的に動かす(主に四肢、体幹にある筋肉)。
- 前皮質脊髄路:首から下の筋を意識的に動かす(脳が障害を受けた時の予備経路)。
- 皮質延髄路(皮質覚路):首から上の筋を意識的に動かす(主に顔面にある筋肉)。
〜覚えておきたい!下行性伝導路=錐体外路:姿勢や運動の調節に無意識的に働く〜
- 赤核脊髄路:赤核とは中脳の中心付近にある部位で、そこを起点にから脊髄を下行する。
- 視蓋脊髄路:視蓋とは中脳の中脳蓋領域にある四丘体のうちの上丘のことで、そこを起点に脊髄を下行する。
- 前庭脊髄路:前庭とは内耳にある蝸牛と三半規管の間にある部位で、そこを起点に脊髄を下行する。
- 網様体脊髄路:網様体とは脳幹(主に橋、延髄)にある灰白質と白質が混在した部位で、そこを起点に脊髄を下行する。
解剖について、場所が分からない場合は、教科書をみて確認して下さい。その際、脳については、前額・水平・矢状断の断面図により立体的にイメージできるといいですね。また、前述しましたが、錐体外路系は深入りしてはダメです。浅く理解しておいて下さい。
大まかな神経系の流れを理解した上で、解剖的な細かな部位や機能を覚えていきます。まずは、大まかな神経系の役割を「森」として理解し、それから各部位の名前や機能といった「木」を覚えていく勉強を心掛けて下さい。それが理解できれば、木から森をみることができ、これは臨床現場で役立つ知識になるのです。
まとめ
人間は環境の変化により様々な刺激を受け、様々な反応を示します。これが神経系です。理学療法は、この機能の再獲得をする手段です。だから、臨床実習では、この辺の知識が求められます。なぜなら、対象となる患者さんの多くは、筋力を発揮し、基本動作や日常生活動作の再獲得を目的にリハビリをしているからです。
だからこそ、わからなければ、もう1度、このブログの関連する記事を読み直して復習して下さい。読みながら、人体の解剖や仕組みがイメージできればOKです!逆に言うと、イメージできなければ、いくら勉強しても、臨床実習で使える知識にならないし、PT国試では点数が取れないと思います。そうなれば、意味のない勉強に時間を費やしているということになってしまいます。
是非とも、勉強の基本である、
「イメージとともに理解し、ひたすら反復する。」
を実践して下さい。そして、これをPT国試の過去問をやりながら行って下さい。
ここまでが、いわゆる動物機能です。
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