「温痛覚=外側脊髄視床路」です!
別の記事「皮膚の構造を覚える。そして、感覚受容器の種類を覚える。」では、感覚受容器の種類と覚え方を簡単に解説しました。
「感覚受容器」での刺激はその後、どうなるのでしょうか?
まずは、表在感覚の中の「温痛覚」からみていきましょう。
「皮膚の構造を覚える。そして、感覚受容器の種類を覚える。」の記事の際にも説明したように、身体に害を及ぼすような「侵害刺激」、すなわち、温痛覚(温度覚と痛覚)は、同じ伝導路です。この伝道路を「外側脊髄視床路」と言います。
痛みや熱いという感覚刺激は「自由神経終末」で受容し、感覚神経の中に活動電位が発生(興奮)、その後、興奮は移動していきます。興奮は脊髄後根から脊髄に入り、後角細胞とシナプスを作ります。
ここで確認ですが、「後根は感覚性、前根は運動性」です。これを「ベルマジャンディーの法則」と言います。よって、感覚は後ろから入ります。
戻ります。
後角細胞とシナプスを作った神経は、そのまま脊髄を反対側へ交叉し、「側索」を上行していきます。ここがポイントです!
下行性伝導路である「外側皮質脊髄路」は延髄で交叉(錐体交叉)しました。
一方、「外側脊髄視床路」は「脊髄で交叉」します。その後、延髄→橋→中脳の外側(脊髄毛帯)を上行し、視床でシナプスを作ります。
そして、視床からの細胞が中心溝(ローランド溝)の後方、頭頂葉の中心後回にある「一次体性感覚野」に侵害刺激を伝えます。
外側脊髄視床路のポイントは、以下の通りです。
- 3本の神経で、2つのシナプスを作ること。
(①皮膚からの神経、②後角細胞からの神経、③視床からの神経) - 脊髄に入った神経は、すぐに反対側へ交叉すること。
- 側索を上行すること。
- 視床を経由すること。
臨床では、視床出血によりリハビリの対象になる患者さんがいます。このような人は感覚系がやられているので、痛みがわかりません。そして、このような人に温熱療法(ホットパックなど)は注意が必要ですね。
覚え方として、こんなイメージを使うと頭に残ります。
温痛覚の特に熱いものを触った時、耳たぶを触ることをイメージして下さい。
熱っ!→耳たぶ→耳たぶは外側にあるから「”外側”脊髄視床路」です。少し強引な方法ですが、このように覚えて下さい(笑)!「温痛覚=外側脊髄視床路」・・・イメージできましたか?
「粗大触圧覚=前脊髄視床路」です!
「外側脊髄視床路」の次は、「前脊髄視床路」です。
その前に、「前脊髄視床路」は触圧覚に関与しているのですが、触圧覚には、大きく2つあります。
- 粗大触圧覚:何となく何かが触っているような感覚。
毛のある皮膚での感覚。 - 微細触圧覚:スベスベ、ザラザラなど物を細かく識別できる感覚。
毛のない皮膚(手のひら・指先など)での感覚。
「前脊髄視床路」は、粗大触圧覚の伝導路です。では、どのような経路をたどるのでしょうか?
何かに触っている感覚刺激は、メルケル盤などの感覚受容器で受容し、感覚神経に活動電位が発生(興奮)します。そして、興奮は脊髄後根から脊髄に入り、後角細胞とシナプスを作ります。
後角細胞とシナプスを作った神経は、そのまま脊髄を反対側へ交叉し、「前索」を上行していきます(左手の感覚刺激なら、右側の脊髄に交叉する)。ここがポイントです!
外側脊髄視床路は「側索」でした。
前脊髄視床路は「前索」です。そして、やはり脊髄に入ったらすぐ交叉します。その後、延髄→橋→中脳を上行し、視床でシナプスを作ります。そして、視床からの細胞が頭頂葉の中心後回にある「一次体性感覚野」に、何かに触れている感覚を伝えます。
「前脊髄視床路」のポイントは、以下の通りです。
- 3本の神経で、2つのシナプスを作ること。
(①皮膚からの神経、②後角細胞からの神経、③視床からの神経) - 脊髄に入った神経は、すぐに反対側へ交叉すること。
- 前索を上行すること。
- 視床を経由すること。
ほとんど「外側脊髄視床路」と同じですね。脊髄の側索か前索との違いです。
「外側脊髄視床路」のところでもお話しましたが、視床出血などにより、視床がやられてしまうと、感覚系がほとんどきかなくなります。例えば椅子に座っている感覚や立位時の足に体重が乗っている感覚がわからなくなってしまうので、姿勢保持や基本動作を再獲得する上で工夫が必要になってくると思います。
「前脊髄視床路」の覚え方は、こんなイメージを使うと頭に残ります。
粗大な触圧覚を「”前に押す”感じ」のようにイメージして、前に押しながら「”前”脊髄視床路」と覚えます。またまた強引ですね!「粗大触圧覚=前脊髄視床路」・・・イメージできましたか?
「(脊髄)後索路=微細触圧覚・識別性深部感覚」です!
触圧覚には、先ほど説明した、何となく何かが触っているような感覚である「粗大触圧覚」と、これから説明する「微細触圧覚」があります。
「微細触圧覚」とは、物を細かく識別できる感覚です。この感覚の経路は、脊髄の後索を通るので、教科書によっては「脊髄後索路」と言ったり、ただの「後索路」と言ったりします。
また、別の記事で、「深部感覚には何がありますか?」と質問しました。
その時の答えは、意識できる(識別性)深部感覚と意識できない(非識別性)深部感覚というお話もしました。
ここで復習ですが、意識できる深部感覚は、振動覚・運動覚・位置覚、意識できない深部感覚は、筋・腱の長さの変化を感知する感覚、でしたね。
そして、「後索路」は、微細触圧覚だけではありません。意識できる深部感覚も、微細触圧覚と同様の経路をたどります。
では、「後索路」を具体的に見ていきましょう!
例えば、指先に触れた微妙な感覚は、マイスネル小体などの感覚受容器で受容します。また、目をつぶっても関節の角度が分かるのは、関節包にあるルフィニ小体などの感覚受容器で受容することでわかります。
受容した刺激により、感覚神経に活動電位が発生(興奮)します。興奮は後根から脊髄に入り、シナプスを作らず、脊髄で交叉もせずに後索を上行します。
これは、今までの「外側脊髄視床路」や「前脊髄視床路」と異なりますね。これらは、脊髄に入ったらすぐ反対側に交叉しました。
微細触圧覚は、脊髄に入ったら、入った側の後索に行き、そのまま延髄まで上行していきます。
ここで補足です。
脊髄の後索は、中心側の「薄束」とその外側にある「楔状束」から構成されます。中心側の「薄束」は下肢の感覚刺激の経路であり、その外側にある「楔状束」は、上肢の感覚刺激の経路です。
戻ります。
延髄でシナプスを作り、ここで反対側に交叉し内側毛帯へ。その後、延髄→橋→中脳で内側毛帯を通りながら、視床でシナプスを作ります。そして、視床からの細胞が頭頂葉の「一次体性感覚野」に微細な感覚を伝えます。
(脊髄)後索路のポイントは、以下の通りです。
- 3本の神経で、2つのシナプスを作ること。
(皮膚からの神経、延髄からの神経、視床からの神経) - 脊髄に入った神経は、交叉せずに後索を上行すること。
- 後索は、上肢の感覚は「楔状束」を、下肢の感覚は「薄束」を通る。
- 視床を経由すること。
PT国家試験勉強の鉄則は、頭の中で経路のイメージイを作ることです。インプットとして頭にイメージを作ることができましたら、アウトプットとして自分で実際に経路図を書いてみて下さい。ここは非常に重要なため、図が書け、誰かに説明できることが目標です!
まとめ
ここでは、以下の伝導路の解説をしました。
- 外側脊髄視床路=温痛覚
- 前脊髄視床路=粗大触圧覚
- (脊髄)後索路=微細触圧覚・識別性深部感覚
これらの伝導路を、正確に理解していないと、ブラウン・セカール症候群などの脊髄障害の感覚障害を理解することができません。是非とも頭の中で経路図のイメージを作り、それを自分で実際に書けるようになって下さい。そして、最終的には誰かに説明することで知識の定着を図って下さい。
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