臨床実習が不安で眠れないPT学生へ〜認知行動療法で「不安」思考をラクにする方法〜
これから臨床実習を迎えるPT実習生さん、
あるいは、臨床実習の真っ只中で不安やストレスに押しつぶされそうなあなたへ。

- 「眠れないほど不安」
- 「先輩に怒られたらどうしよう…」
- 「何をやってもミスしそうで怖い」
そんな思いで夜も眠れなくなり、睡眠時間が減っていませんか?
この記事では、理学療法士として実習生を指導してきた私の経験と、自分自身が適応障害を乗り越える中で助けられた認知行動療法を、PT実習生向けにわかりやすく紹介します。
認知行動療法は、国家試験でも臨床心理分野で出題されますので、国試勉強も兼ねながら自分でも実践してみて下さい!
この記事を読むとわかること
✅ 臨床実習の不安で眠れないときの具体的な対処法
✅ 「極端な考え」に気づいて心を軽くする方法
✅ 認知行動療法を使った簡単セルフケアのやり方
臨床実習の不安は誰にでもある
私が勤務する施設にも、毎年多くのPT実習生が来ます。
みんな最初は緊張で声が震え、
電話連絡さえ台本を読むようにたどたどしいものです。
実習に入る前に「寝れなかった」「課題がきつい」「先輩に怒られた」・・・等々、
そんな噂を聞くと、不安がどんどん膨らむのも当たり前です。
不安を放っておくと心が限界に…
私自身、PTとして働く中で、過度のストレスで適応障害を経験しました。
放っておくと、心の負担はどんどん大きくなり、うつ病へ進行してしまうこともあります。
そんな私を救ってくれたのが「認知行動療法」です。
私の体験はこちらでも詳しく紹介していますので是非とも読んでみて下さい!
👉 私の適応障害体験とCBTの話
認知行動療法とは?
認知行動療法とは、以下のように説明できます。

認知行動療法(CBT)とは、「極端な考え方」や「思い込みのクセ」に気づいて修正することで、心をラクにする方法です。
アメリカの精神科医であるアーロン・T・ベックが開発したもので、PT国家試験にも出題される、今注目の精神療法です。
例えば、臨床実習でよくある「極端な考え」はこんなものです。
- 「私は勉強ができない」
- 「どうせ私はミスばかりする」
- 「絶対に指導者に嫌われた」
でも本当にそうでしょうか?
まずは「自動思考」に気づこう
認知行動療法では、出来事に対して瞬間的に浮かぶ考えを自動思考と呼びます。

自動思考とは、何かの出来事があった時に瞬間的に浮かぶ考えのことです。
例えば…
「質問したら指導者が冷たかった」
→ 「私は嫌われたんだ…」
→ 「もう質問できない…」
→ 「不安で眠れない…」
でも、本当は…
- たまたま指導者が忙しかっただけかもしれない
- 自分を嫌っているとは限らない
・・・かもしれませんね。
自動思考を意識するだけでも、不安は小さくできます。
自動思考は気分・行動・身体に影響を与えます
私たちは自動思考によって、気分・行動・身体が影響を受けて変化します。
自動思考がその後の気持ちや行動に影響を与える
出来事
→ その時に浮かんだ考え(自動思考)
→ 気分・行動・身体に影響
例えば・・・
- 出来事:質問した
- 自動思考:「嫌われたかも」
- 気分:不安
- 行動:質問しなくなる
- 身体:胃が痛い、眠れない
人間は感情の動物と言われるわけですね。
ほんの些細なことでも、気持ちが揺さぶられ、行動に影響してしまうものです。
感情と言葉を一致させて整理しよう!
特に、不安を感じたときは、気分を「言葉」にしてみるだけで、だいぶ楽になります。
つらい時は「実習がつらい」、不安な時は「不安に押しつぶされそう」と誰かに打ち明けてみて下さい。
以下は、出来事を認知した時の感情と行動の関係性を表したものです。
四大感情と認知・行動は密接な関係にある!・・・感情←→認知←→行動
- 喜び ←→ 何かを得た(獲得) ←→ 行動が前向き(拡張)
- うつ ←→ 何かを失った(喪失) ←→ 行動が後ずさり(退却)
- 不安 ←→ 危険を感じた(危険) ←→ 行動が避ける(回避)
- 怒り ←→ 侵入されたと感じた(侵入) ←→ 行動が攻める(攻撃)
特に、ネガティブ感情は「こころの警報機」です。
焦って行動せず、まずは落ち着いて、自分がどのような状態にあるのか整理してみましょう。
自分でわからない場合は、誰かに相談して、自分がどういう状態にあるのか客観的に見てもらいましょう。
【実践】今日からできる認知行動療法のセルフケア
今日からできる簡単なステップです👇
✅ ステップ① 紙に書く
「私はダメだ」「絶対に無理だ」と思ったら、とにかくそれを紙に書き出す。
モヤモヤした頭のままでは、問題は解決しません。
✅ ステップ② 他の考えを探す
「本当にそう?」と問いかけて、別の可能性を考えてみる。これを「認知再構成法」と言います。
「挨拶したけど無視された」→「挨拶が聞こえなかったかも」
✅ ステップ③ 誰かに話す
信頼できる友人、先輩、家族、指導者に話す。
とにかく、誰かに相談することが大切です。自分で抱え込まないこと。
認知の偏りは誰にでもある
もし次のような言葉を自分に言っていたら要注意です。
発していませんか? 自分や相手をむしばむ「決めつけ言葉」
- いつも・・・・・「私は(あなたは)いつもミスをしてばかりだ」
- 決して・・・・・「この方法でやっても決してうまくはずがない」
- どうせ・・・・・「どうせ何をやってもダメなんだ」
- やっぱり・・・・「やっぱり私には(あなたには)できなかった」
- 絶対に・・・・・「私には(あなたには)絶対に無理だ」
- 何をやっても・・・私は(あなたは)何をやってもうまくできないよ」
- 私が悪い・・・・・「この失敗は私が(あなたが)悪いんだ」
これらは認知の偏り(思い込み)を強める言葉です。
また、CBTでよく出てくる「思考のクセ」はこちらです。
自分自身ははどうなのか? 特徴的な認知の偏り(ゆがみ)に気づいて心を軽くする
- 思い込み・決めつけ:
実習でミスをした時に、「私はいつもミスをしてばかりだ」と考える。 - 白黒思考:
指導者から測定のミスを指摘された時、「やはり自分は勉強ができないのだ」と考える。 - べき思考:
できるだけの検査・測定の準備をしてもミスが出た時に、「もっと準備をすべきだった」と考える。 - 自己批判:
グループで取り組んできたレポート課題でミスをした時、すぐに「自分が悪かったのだ」と考える。 - 深読み:
指導者が不機嫌な顔をしているだけで、「指導者は私のことを嫌いになったんだ」と考える。 - 先読み:
前回の実習で失敗した経験から、「きっと今度も失敗するだろうと」考える。
これらに気づければ、気持ちを軽くできます!
まとめ 〜不安は「考え方のクセ」で変えられる〜
臨床実習の不安は誰でも感じるものです。
でも、その不安に飲まれずに、
「考え方のクセ」に気づいて修正するだけでも心は軽くなります。
💡 つらい時は一人で抱え込まないで
もし、つらい時、苦しい時が訪れたら、友人や家族、信頼できる指導者に話してみてください。
必ず助けになってくれるはずです。
【参考図書】
- 『簡易型認知行動療法実践マニュアル』 大野裕 他(ストレスマネジメントネットワーク)
- 『はじめての認知療法』 大野裕(講談社現代新書)
- 『マンガでやさしくわかる認知行動療法』 玉井仁 他(日本能率協会)
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