片麻痺患者さんの評価を考える

国家試験

片麻痺患者さんの身体的特徴は?

別の記事「伸張反射と同時に覚えよう、相反神経支配・Ⅰb抑制・α-γ連関!」で解説しました、伸張反射、相反神経支配、Ⅰb抑制、α-γ連関については理解できているでしょうか?

この4つのメカニズムは臨床上、非常に重要な知識であり、特に片麻痺患者さんのために使える知識です。したがって、PT国試だけでなく、臨床実習や実際にPTになってからも必須の知識なので、4つセットでしっかり理解しておいてください。是非とも図とともにイメージできるようになって下さいね。

今回のテーマは、理学療法士が出会うことが非常に多い片麻痺患者についてです。

中大脳動脈のどこかの血管に血栓が詰まると(脳梗塞)、ほとんどの場合、後遺症が出現します。中大脳動脈は大脳皮質の一次運動野領域に血液を送っているので、当然、その血管の血流が途絶えれば、運動障害が出現するでしょう。このように、上位運動ニューロンが障害されると錐体路徴候がみられます。

錐体路徴候は、教科書的には以下の内容が書いてあります。

〜覚えておきたい!錐体路徴候〜

  1. 痙縮(痙性麻痺)
  2. 筋緊張(筋トーヌス)亢進
  3. 腱反射亢進
  4. 病的反射出現
  5. クローヌス出現

これらは、どのようにして起こるのでしょうか?

まず、確認しておきたいことがあります。
別の記事「錐体路と筋との間で起こっていることとは?」で、中枢神経(特に脳)の役割について説明しました。

この時、脳の役割は、下位運動ニューロンに対して「命令と抑制」を行っていることを説明しました。

「命令と抑制」について復習しておきます。

〜覚えておきたい「脳の役割」〜

  • 命令:下位運動ニューロンに対して、筋を収縮しろ!と命令している。
  • 抑制:下位運動ニューロンに対して、筋を収縮しすぎず、いい感じで収縮しろ!とブレーキをかけている。いわば、馬のたづなを引いているみたいな感じです。


つまり、「命令と抑制」が破綻した状態が「錐体路徴候」なのです。

具体的にみていきましょう。
まず、脳の「抑制」がきかなくなったらどうなるでしょう?

先ほどの錐体路徴候を見てみると、
4.病的反射出現
5.クローヌス出現

は、本来、脳の「抑制」がきいている時は出現しません。脳梗塞により、脳の「抑制」がきかなくなったので、出現してしまうのです。

では、
1.痙縮
2.筋緊張亢進
3.腱反射亢進

はどうでしょうか?
これらの異常は同じメカニズムです。

これまた復習ですが、筋は「錘内筋」と「錘外筋」で構成されていることは、別の記事「伸張反射と同時に覚えよう、相反神経支配・Ⅰb抑制・α-γ連関!」で説明しました。

つまり、錘外筋α運動ニューロン錘内筋γ運動ニューロンの2本の下位運動ニューロンから興奮を受け取ります。

具体的に示すと、

〜筋に関わる運動神経の役割〜

  • α運動ニューロンが興奮→骨格筋の収縮(骨格筋の短縮)
  • γ運動ニューロンが興奮→筋紡錘の収縮(筋紡錘の伸張)

では、脳梗塞になったどうなるのでしょう?

脳から、「筋を収縮しろ!」との命令がなくなるので、運動麻痺が起こります。そして、「筋を収縮しすぎず、いい感じで収縮しろ!」との抑制もなくなるので、以下のようの反応が起こります。

〜脳梗塞時に起こる運動神経の反応〜

  • α運動ニューロンが異常に興奮→骨格筋の過剰収縮(骨格筋の過剰短縮)
  • γ運動ニューロンが異常に興奮→筋紡錘の過剰収縮(筋紡錘の過剰伸張)

これが、痙縮という状態です。
つまり、以下のような状態が、脳梗塞の患者さんで見られる痙性麻痺という状態です。

〜脳梗塞患者さんに見られる筋の状態〜

「命令」の破綻による運動麻痺 +「抑制」の破綻による痙縮 = 痙性麻痺

この状態では当然、筋紡錘が過剰伸張しているので腱反射は亢進しますし、骨格筋も過剰収縮しているので筋緊張は亢進します。脳梗塞の後遺症である片麻痺の患者さんの筋は、このような状態になっているのですね。

片麻痺患者さんの評価について

だから、関節可動域訓練をする時は、すばやく動かしてしまうと伸張反射を誘発してしまうので、ゆっくり動かし、「Ⅰb抑制」を促しながら行うのです。

PT国試の知識は臨床実習の知識でもあります。これが、最近のPT国試の特徴です。勉強する時は、PT国試と臨床実習を意識しながら行って下さい!

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